第308章

島宮健太はそのまま通り過ぎようとしていたが、誰かに名前を呼ばれて足を止めた。顔を上げると、車内に島宮奈々未がいる。彼は踵を返し、さっきよりも速い勢いで駆け出した。

「健太、健太!」

島宮奈々未は何度も叫んだ。信号待ちの交差点で車を止めていたせいで、後ろの車がクラクションを鳴らして急かしてくる。仕方なくいったん交差点を抜け、路肩に寄せて停車すると、車を降りて健太が走り去った方角へ追いかけた。

健太は細い路地へ入っていった。奈々未も小走りで追ったが、腹の痛みがどうにもならず、途中で諦めるしかない。

健太が帝都にいる。なら藤原邦達も――?

それに、どうして健太は彼女の顔を見た途端に逃げた...

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